

糸魚川-静岡構造線
フィールドミュージアム

小原島の貝化石
南アルプスを押し上げるスピードはかなり速い
南アルプスやその周辺地域は、衝突や付加作用によって海域から陸域に転じました。
その後は、赤石山地における監視データによれば、年間3~4mm というスピードで上昇を続けています。
100万年上昇が続けば3000~4000mの高さに上昇する計算になり、100万年前ごろにできたという南アルプスの歴史から見てつじつまが合うことになります。
このような上昇を示す証拠は、地層にも残されています。
早川町東側に発達する富士川層群中の曙層では、地層に含まれる貝化石に加え、礫岩の存在から、この地域が海域から陸域へ転じた環境推移の様子を読み取ることができます。
貝の化石からはこの場所が海の環境であったことが、 また礫岩の存在からは、その背後で急激に上昇した山地から下流域へ砂礫が供給されたことが分かります。



地層が堆積した時期は、陸地が後退して海が広がる海進の時期となった後期中新世末~前期鮮新世初頭(約600万年前ころ)で、多くの軟体動物やサンゴ、コケムシ、腕足動物などの化石が産出します。
産出する二枚貝は、二枚が閉じたものもあればバラバラになっているものもありますが、貝殻はほとんど摩滅しておらず、まとまっていることから、生息場所やその付近で生息していたことが推測されています。
その後は衝突と付加作用によって急激な陸地の上昇が生じ、貝が暮らしていた浅瀬に砂礫が流れ込んだ様子が化石層に記録されています。


この露頭は、山梨県自然記念物「小原島大露頭の化石群」に指定されているとともに、軟体動物化石群は日本地質学会から山梨県の化石「富士川層群の後期中新世貝化石群」に選定されています。
化石が産出する「遅沢砂岩部層」は、身延町の南北中間付近(旧中富地区南部)の曙向斜(身延町梨子、江尻窪南方、粟倉字小原島、遅沢、八日市場字後山)に沿って分布しています.

出典:産総研5万分の1地質図幅「身延」から作成
https://www.gsj.jp/Map/JP/docs/5man_doc/08/08_069.htm
(地質図(ラスタ・ベクトル)・説明書(PDF)データがダウンロードできます)